枡野浩一について考えてみた。

読了。

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

面白かった。くだんねーこと全力で突き詰める人は基本的に好きだから。
結構マニアックな題名を挙げてるところがいい。みんなそんなに知ってるだろうか。
「屁で空中ウクライナ」とか「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」とか。いや、案外有名なんだろうか。新書とか読む人にとっては常識かしらん。あたしの周りではみんな共通認識として知ってるだろうが。
ヒロトは天才である」とか言い切ってる感じも好きだ。

ブルボン小林は、長嶋有と同一人物の多才な人だけども、俳人でもあるそうだ。
「夏休み暑くてたまらん昼寝しよ」
ポメラニアンすごい不倫の話聞く」
とか、センスいいなこの人。こういうつくりの俳句(俳句ではねーよなw)ものすごい好きだ。

この本読んで、穂村弘に興味をもった。そういえば、共同通信が配信してる書評欄でとりあげられてたな、これ。

にょっ記

にょっ記

この本にはよく枡野浩一の話が出てくる。筆者が親しくしているそうだが。
枡野浩一といえば最近は、加藤あいと一緒にCMで歌を詠んだりしておりますね。
あたしの認識では彼は、高校生のころあたしが結構熱心に愛読していた「ロックンロールニューズメーカー」という音楽雑誌がありまして、そこで連載をされとりました。
ハービー・山口だとかセーフティ・ブランケットとか知ったのもそのときだな(余談)。

件の枡野氏は当時(今でも続いてるかもしんないけど最近読んでないから知らない)、その雑誌において「筆舌に尽くしたい!」というタイトルの連載をしていた。たぶんコラムだったと思うが、「枡野浩一、誰だ?歌人?」と思って、そしてタイトルの不自然さで覚えていた。当時のあたしは「筆舌に尽くし難い」という言葉を知らなかった気がするんだな。あとから、そのタイトルの秀逸さを知ったように記憶している。
歌人なんていう耳慣れない職業の人って、なぜか覚えてしまってるんだ。いまだにあたしが「荒川洋治」を覚えてるみたいに(彼はたぶん「詩人」で、昔産経新聞だか讀賣新聞だかで書評欄を担当していた)、変り種の仕事に就いている人って、「歌人ん?」「詩人ん?」と訝っては記憶にとどめていたんだと思う。

今回同書で取り上げられてるのは、「寂しいのはお前だけじゃな」なんだけど、ああ、これもたしか見たことはあるなあ、と。
たしかにこの切り返し、凄い。「い」一言を取るだけで、ここまで方向転換ができるっていうのは、言葉のもつ潜在能力だといっていい(これカタカナでなんていうか忘れちった)。
しかもなんとなく笑えるこのタイトル。見放された感が壮絶。そしてなぜかジジイ。この落差が笑える。そして「い」一文字でこの転換ぶり。これは凄い。

で、「筆舌に尽くしたい!」。これにもパンチがある。「が」一文字抜いただけで。諦念と情熱がそっくり入れ替わっている。さすが、歌人ともなると、普段から扱っている「タイトな言葉数」にモノを言わすことに長けているなあとこれは関心した。歌人凄い。胡散臭いとばかり思っていましたがすみません謝ります。センスが違うなあ。

てことで、いろいろ考えるいい機会になりました。この人の芥川賞受賞作もこんど読んでみよう。